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シンセティック・ストーンとはなに?
シンセティック・ストーンとは合成石のことです。合成石は天然石と同じ化学組成と結晶構造をもちます。人工的につくられたということだけがちがっています。人工的につくられるということは、大量生産が可能だということです。
宝石の条件とは、美しさ、耐久性、そして稀少性だと云えます。大量生産できるのですから、単に稀少性という点で、合成石は天然石に大きく劣っています。また、美しさの稀少性、についても同様です。自然の成長過程でつくられる(気の遠くなるような膨大な時問をかけてつくられる)天然石は、美しさのひとつひとつが、ちがっています。これに対して、合成石では、合成成分を計算し、人工的につくるものなのですから、仕上がりは色も美しさも均一です。
合成石が合成のなまえで、手頃なアクセサリーとして売られることは、なにもわるいことではありません。合成ルビーでは売れないから、シンセティック・ルビーとして売る。シンセティックとはまさに合成のことですから、もしその種の説明があるなら、これも許されることです。大事なのは、合成石であると明示されること、その価値に見合った手頃な価格であること、この二点だけです。
合成の技術が進歩するにつれ、天然石の価値が落ちることを心配する声が、宝石業界のなかでもありますが、さてこれはどうでしょうか。私にはまず考えられないことだと思えます。逆に、それによって、天然石の価値がますます上昇することは、確実だとさえ思えます。
繰り返しますが、天然石は、この地球の奥底で、膨大な時間をかげて、生成された天然の産物です。ロマンチックな云いかたをすれば、この地球という名の、ちいさな惑星からの、これは贈りものなのです。古来から、ひとはそこにさまざまなメッセージを読み取り、それをつぎの世代へと引き継ぎました。宝石とはそういうものです。
合成石は宝石なのではありません。また、合成石はニセモノなのでもありません。私もこの本のなかで、天然石=ホンモノ、合成石=ニセモノ、という意味のことを客きましたが、これは本来正しくありません。天然石は天然石であり、合成石は合成石です。
しかしこのような当たり前のことが通じないのは、一部の合成石の製造者が、合成石の痕跡を消し、内部特徴まで天然石に似せようという方向で苦心してきた結果だと云えます。そして現在、合成石と天然石との区別はますます困難になっています。鑑別機関は科学的方法を駆使して、これを見破ろうとしています。しかし見破られれば、製造者はより高度な技術を開発して、その先を行こうとします。そしてこの古典的なイタチごっこはますますエスカレートしています。
おそらく、合成石製造者は、それが合成石であると簡単に分かる証拠を、意識的に内部に残すべきではないでしょうか。外から見ては分からないけれども、拡大検査をすれば容易に区別できるような特徴ある痕跡を、内部に残すべきではないかと思います。そうしてフェアーな立場に立って、みずから、合成石の魅力を積極的に語っていくべきだと思います。
そうしないないかぎり、合成石は、天然宝石に対する、いかがわしいニセモノであるとの烙印を押され続けたままでいることになるでしょう。
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