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■誕生石 じぶんの生まれた月の宝石、つまり誕生石を身につけるという習慣は、現在では広く定着しています。誕生石が幸運をよぶ、身を守ってくれる、という誕生石神話も、それがどの程度シリアスに受け取られているかはべつにして、広く知れ渡っています。 人々がいつからそういうことをするようになったのか、はっきりしたことは分かりませんが、宝石と人間との歴史をみると、ひとはずいぶん古くから、そう、はじめて宝石を発見したときから、宝石をなにかのシンボルとして考えていたことか分かります。ある宝石は力を意味すると考えたり、ある宝石は威厳を、ある宝石は幸福を意味すると考えたりする、そういう捉えかたは、人間と宝石とのつき合いの、どうやら原点にあるようです。それが占星術とあいまって、月ごとの宝石がある、生まれた月の宝石を身につげるといいことが起こる、というふうに考えられていったとしても、不思議ではありません。 けれどじっさい、現在のようなかたちで誕生石が明確にリスト・アップされたのは、たかだか40年ほどまえのことです。はじめアメリカで提案れたものが、すぐさま各国に広まり、その国々の独特の好みを多少交えながら、定着していったのです。誕生石にリスト・アップされたものは、ここでも、それぞれなにかのシンボルとされています。たとえば7月はルビーで、情熱、仁愛、威厳の象徴とされているようにです。 この科学の時代にはそぐわない、あまりに非合理的な考えかたのように思えますが、一方には、星占いの載っていない雑誌を見つげるほうか難しいという現代の一側面かあって、それを思うと、このシンボルだとか誕生石神話だとかいうのも、満更意味のないことではないのかな、とも思えます。 ただ宝石を扱う者として云っておきたいのは、誕生石にリスト・アップされた宝石はすべて、それぞれに異なる美しさをもった自然の産物で、多くのひとに好まれる美しさをもったものであること、そのことが、現在のような誕生石の習慣が広く定着した理由であろうということです。 繰り返しますが、いまのような誕生石リストが定着したのはたかだか40年前のことです。げれど、宝石に神秘を感じ、畏敬の念をもって愛してきた宝石と人間の歴史の原点は、紀元前のはるかかなたに遡るのです。そのことを強調しておきます。 |
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